社労士コラム
IPO労務監査のチェックリスト(2022年(令和4年)4月育児・介護休業法の改正)
2022.01.18IPO労務監査
IPO労務監査において、重要なチェック項目の1つとして、「2022年(令和4年)4月改正の育児・介護休業法」があります。
「2022年(令和4年)4月改正の育児・介護休業法」について、正確にその内容を把握できていないと、思わぬところで「法的なリスク」を抱えている可能性がありますので、IPO労務監査において、その内容を的確に把握する必要があります。
改正育児・介護休業法は、2022年(令和4年)4月、2022年(令和4年)10月、2023年(令和5年)4月に3段階で施行され、このうち2022年4月と2022年10月に施行される内容は就業規則(育児・介護休業規程)の変更が必要になります。
そこで、今回は、2022年(令和4年)4月改正の育児・介護休業法について、解説したいと思います。
まず、令和4年4月1日改正の育児・介護休業法の改正ポイントは、下記の3つです。
①育児休業を取得しやすい雇用環境整備の義務化
②妊娠・出産の申出をした労働者に対する個別の制度周知・意向確認措置の義務化
③有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和
なお、③については、就業規則(育児・介護休業規程)等の変更が必要となります。
このため、IPO労務監査においても、③について、育児・介護休業規程等の変更がされているかどうかチェックされます。
目次
育児休業の申出が円滑に行われるようにするため、会社は下記のいずれかの措置を講じなければなりません。
つまり、下記の(1)~(4)の中からどれか必ず1つは講じなければならないことになります。
なお、令和4年10月以降は、産後パパ育休に対しても、下記のいずれかの措置を講じなければなりません。
(1)育児休業に関する研修の実施
(2)育児休業に関する相談体制の整備等
(3)自社の労働者の育児休業取得の事例収集・提供
(4)自社の労働者へ育児休業制度と取得促進に関する方針の周知
通達によると、「研修の実施」は、その雇用する全ての労働者に対して研修を実施することが望ましいものであるが、少なくとも管理職については、研修を受けたことがある状態にすべきであるとしています。
また、「研修の実施」については、定期的に実施する、調査を行う等職場の実態を踏まえて実施する、管理職層を中心に階層別に分けて実施する等の方法が効果的と考えられるとしています。
通達によると、「相談体制の整備」とは、相談体制の窓口設置や相談対応者を置き、これを周知することとしています。
また、相談窓口を形式的に設けるだけでは足らず、実質的な対応が可能な窓口が設けられていることをいうものであり、労働者に対する窓口の周知等により、労働者が利用しやすい体制を整備しておくことが必要であるとしています。
通達によると、「事例収集・提供」とは、自社の育児休業の取得事例を収集し、当該事例の掲載された書類の配布やイントラネットへの掲載等を行い、労働者の閲覧に供することとしています。
なお、「事例収集・提供」については、男女双方の事例を収集し、提供することが原則であるが、男女いずれかの対象者がいない場合に片方のみとなることはやむを得ないとしています。
また、提供する取得事例を特定の性別や職種、雇用形態等に偏らせず、可能な限り様々な労働者の事例を収集、提供することにより、特定の者の育児休業の申出を控えさせることに繋がらないように配慮することとしています。
通達によると、「育児休業制度と取得促進に関する方針の周知」とは、育児休業に関する制度及び育児休業の取得の促進に関する事業主の方針を記載したものの配布や事業所内やイントラネットへ掲載等を行うものであることとしています。
本人又は配偶者の妊娠・出産等を申し出た労働者に対して、会社は育児休業制度等に関する下記の事項の周知と休業取得の意向確認を、個別に行わなければなりません。
なお、令和4年10月以降は、産後パパ育休に対しても、下記の事項の周知と休業取得の意向確認を、個別に行わなければなりません。
a.育児休業に関する制度
b.育児休業の申出先
c.育児休業給付に関すること
d.労働者が育児休業期間について負担すべき社会保険料の取扱い
a.面談
b.書面交付
c.FAX
d.電子メール等(プリントアウト可能な状態であること)
通達によると、c.d.については、労働者が希望した場合のみとされています。
通達によると、申出方法は、法律上、申出の方法を書面等の提出に限定していないことから、会社において特段の定めがない場合には、労働者からの口頭での申出も含むものとしています。
なお、会社が申出書の様式等を定め、それによる提出を求める等、一定の方法を指定する場合は、これをあらかじめ明らかにした上で、指定された方法ではない申出があった場合でも、内容が伝わるものであるかぎり、措置を実施すべきとしています。
また、申出方法は、労働者にとって過重な負担を求めることにならないように配慮し、適切に定めることが求められるとしています。
通達によると、法律上、事実を証明する書類の提出を労働者に求めることができることについて規定はないが、仮に会社が、労働者又はその配偶者が妊娠、出産したこと等の事実を申出た労働者に対して、その事実を証明する書類の提出を求め、労働者がその提出を拒んだ場合であっても、事実の申出自体の効力には影響がないものであることとされています。
指針によると、「意向確認」とは、会社から労働者に対して、意向確認のための働きかけを行えばよいものであるとしています。
通達によると、原則として、本人又は配偶者の出産予定日の1ヵ月半以上前に妊娠・出産の申出が行われた場合には、出産予定日の1ヵ月前までに措置を行う必要があるとされています。
現行制度は、有期雇用労働者について、下記のいずれにも該当する場合に限り、育児・介護休業の申出をすることができます。
<現行制度>
育児休業
(1)同一の事業主に引き続き雇用された期間が1年以上であること
(2)その養育する子が1歳6ヵ月に達する日までに、その労働契約が満了することが明らかでない
介護休業
(1)同一の事業主に引き続き雇用された期間が1年以上であること
(2)介護休業開始予定日から起算して93日を経過する日から6ヵ月を経過する日までの間に、その労働契約が満了することが明らかでない
<改正後>
育児休業
(1)その養育する子が1歳6ヵ月に達する日までに、その労働契約が満了することが明らかでない
介護休業
(1)介護休業開始予定日から起算して93日を経過する日から6ヵ月を経過する日までの間に、その労働契約が満了することが明らかでない
このため、就業規則(育児・介護休業規程)等の変更が必要となります。
なお、労使協定を締結すれば、引き続き雇用された期間が1年未満の者を育児・介護休業制度の適用から除外することができます。