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社労士コラム

IPO労務監査のチェックリスト(労働安全衛生)

2021.10.1IPO労務監査

IPO労務監査において、重要なチェック項目の1つとして、「労働安全衛生」があります。

①産業医とは?

労働安全衛生法では、常時50人以上の労働者を使用する事業場においては、産業医を選任し、労働者の健康管理等を行わせなければならないとしています。

また、産業医の要件は、医師であり、日本医師会等が行う研修を修了した者となっています。

通常は、外部の医療機関に対して、産業医を委嘱しているケースがほとんどです。

このため、IPO労務監査においても、IPO準備会社の事業場の社員数が常時50人以上の場合は、産業医を選任しているかどうかがチェックされます。

②衛生管理者とは?

労働安全衛生法では、常時50人以上の労働者を使用する事業場においては、その事業場専属の衛生管理者を選任しなければなりません。

また、衛生管理者は、誰でも良いわけではなく、衛生管理者に選任されるためには、業種に応じた資格が必要となります。

業種によって異なりますが、一般的には以下のような資格が必要となります。

(1)第一種衛生管理者免許

(2)第二種衛生管理者免許

(3)衛生工学衛生管理者免許

(4)労働衛生コンサルタントなど

このため、IPO労務監査においても、IPO準備会社の事業場の社員数が常時50人以上の場合は、上記資格を取得した者が衛生管理者として選任されているかどうかがチェックされます。

③衛生委員会とは?

労働安全衛生法では、常時50人以上の労働者を使用する事業場においては、衛生委員会を設置しなければなりません。

なお、衛生委員会のメンバーは

(1)議長1名

(2)衛生管理者1名以上

(3)産業医1名以上

(4)労働者1名以上

ただし、議長以外のメンバーの半数は、過半数労働組合又は過半数代表者の推薦に基づいて指名する必要があります。

このため、衛生委員会の構成メンバーは、最低5名となります。(議長1名、衛生管理者1名、産業医1名、労働者2名)

IPO労務監査においても、IPO準備会社に衛生委員会が設置されているかどうか、設置されている場合は、衛生委員会の構成メンバーが法定の要件を満たしているかどうか、チェックされます。

④定期健康診断とは?

労働安全衛生法では、常時使用する労働者に対して、1年以内ごとに1回、定期に医師による健康診断を実施しなければなりません。

なお、定期とは、毎年一定の時期にという意味なので、その時期については、会社毎に決めることができます。

また、労働者は、事業者が行う健康診断を受けなければなりません。

なお、常時50人以上の労働者を使用する事業者は、「定期健康診断結果報告書」を管轄の労働基準監督署に報告しなければなりません。

IPO労務監査においても、IPO準備会社で、一定の時期に、年1回の定期健康診断が実施されているかどうか、チェックされます。

⑤医師の面接指導とは?

労働安全衛生法では、1ヵ月当たりの時間外・休日労働時間数が80時間を超過しており、その労働者から申出があった場合は、医師による面接指導を実施しなければならないとしています。

また、研究開発業務に従事している労働者に対しては、1ヵ月当たりの時間外・休日労働時間数が100時間を超えた場合は、労働者からの申出の有無にかかわらず、医師による面接指導を実施しなければならないとしています。

さらに、高度プロフェッショナル制度を適用されている労働者については、1ヵ月当たりの健康管理時間(「事業場内にいた時間」と「事業場外で働いた時間」)が100時間を超えた場合は、労働者からの申出の有無にかかわらず、医師による面接指導をしなければならないとしています。

このため、IPO労務監査においても、IPO準備会社で時間外・休日労働時間数が1ヵ月80時間を超えている労働者がいないかどうか、いる場合は、当該労働者から申出があったのか、なかったのかなど、チェックされます。

⑥労働時間の状況把握義務とは?

⑤の医師による面接指導の実施義務を果たすためには、会社は面接指導の対象となる労働者を把握する必要があります。

このため、労働安全衛生法では、事業者はタイムカードの記録等といった客観的な方法、又はその他適切な方法により、労働者の労働時間の状況を把握しなければならないとしています。

なお、この労働時間の状況を把握しなければならない対象者には、高度プロフェッショナル制度適用者を除いた、すべての労働者(管理監督者、裁量労働時間制対象者、研究開発業務対象者など)の労働状況について、把握する必要があります。

IPO労務監査において、よくあるケースが、IPO準備会社の管理監督者や裁量労働制適用対象者については、タイムカード等の記録をとっていないケースがよくあります。

⑦労働時間の通知義務とは?

労働安全衛生法では、事業者は1ヵ月当たりの時間外・休日労働時間数の算出後、その労働時間数が80時間を超えた労働者に対して、労働時間に関する情報を通知しなければならないとしています。

具体的には、80時間を超えた労働者がいる場合は、毎月1回以上、一定の期日において、給与明細への記載等により、労働者本人にその時間数を通知する必要があります。

また、労働安全衛生法では、事業者は、産業医等に対して、時間外・休日労働時間数が80時間を超えた労働者に関する情報を産業医に提供しなければならないとしています。

IPO労務監査においては、IPO準備会社に時間外・休日労働時間数が月80時間を超える労働者がいた場合、当該労働者に対してその時間数を通知しているかどうか、同様の情報を産業医に対しても通知しているかどうか、チェックされます。

⑧ストレスチェックとは?

労働安全衛生法では、常時50人以上の労働者を使用する事業場において、年に1回、ストレスチェックを実施しなければならないとしています。

また、ストレスチェックの結果、一定の要件に該当する労働者から申出があれば、医師による面接指導を実施しなければなりません。

なお、ストレスチェックについては、定期健康診断とは異なり、労働者には受診義務はありません。

また、常時50人以上の労働者を使用する事業者は、「心理的な負担の程度を把握するための検査結果報告書」を管轄の労働基準監督署に報告しなければなりません。

このため、IPO労務監査においても、IPO準備会社の事業場の社員数が常時50人以上の場合は、ストレスチェックを実施しているかどうか、チェックされます。

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