社労士コラム
IPO労務監査のチェックリスト(2025年4月育児・介護休業法の改正)
2024.11.12IPO労務監査
IPO労務監査において、重要なチェック項目の1つとして、「2025年(令和7年)4月改正の育児・介護休業法」があります。
「2025年(令和7年)4月改正の育児・介護休業法」について、正確にその内容を把握できていないと、思わぬところで「法的なリスク」を抱えている可能性がありますので、IPO労務監査において、その内容を的確に把握する必要があります。
なお、改正育児・介護休業法は、令和7年4月、令和7年10月の2段階で施行され、どちらの内容も就業規則(育児・介護休業規程)の変更が必要となります。
そこで、今回は、令和7年4月改正の育児・介護休業法について、解説したいと思います。
まず、令和7年4月1日改正の育児・介護休業法の改正ポイントは、下記の8つです。
なお、①②③⑤については、就業規則(育児・介護休業規程)等の変更が必要となります。
このため、IPO労務監査においても、①②③⑤については、育児・介護休業規程等の変更がされているかどうかチェックされます。
目次
子の看護休暇の見直しについては、以下の4点が変更となります。
(1)対象となる子の範囲の拡大
法改正前:小学校就学の始期に達するまで
法改正後:小学校3年生修了(9歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある子)まで
各種規程等の対象となる子の年齢の変更が必要です。
(2)取得事由の拡大
法改正前:(ア)病気・けが、(イ)予防接種・健康診断
法改正後:(ア)(イ)に追加して、(ウ)感染症に伴う学級閉鎖等、(エ)入園(入学)式・卒園式
各種規程等に(ウ)(エ)の取得事由の追加が必要です。
(3)労使協定による継続雇用期間6ヵ月未満除外規定の廃止
法改正前:<除外できる労働者>
(ア)週の所定労働日数が2日以下、(イ)継続雇用期間6ヵ月未満
法改正後:<除外できる労働者>
(ア)のみで(イ)は撤廃
各種規程等や労使協定で(イ)の労働者を対象外としていた場合は、当該規定の削除をした上で、労使協定の再締結が必要です。
(4)名称変更
法改正前:子の看護休暇
法改正後:子の看護等休暇
各種規程等に「子の看護休暇」の記載がある場合は、名称の変更が必要です。
請求可能となる労働者の範囲が拡大されました。
法改正前:3歳未満の子を養育する労働者
法改正後:小学校就学前の子を養育する労働者
各種規程等についても改正後の年齢に変更する必要があります。
代替措置のメニューが追加されました。なお、短時間勤務制度を講ずることが困難と認められる具体的な業務があり、その業務に従事する労働者がいる場合にのみ、労使協定を締結し除外規定を設けた上で、代替措置を講ずることとなります。
法改正前:(ア)育児休業に関する制度に準ずる措置、(イ)始業時刻の変更等
法改正後:(ア)(イ)に追加して、(ウ)テレワークを追加
改正前は、従業員数1,000人超の企業について男性の育児休業取得状況の公表が義務づけられていましたが、改正後は、従業員数300人超の企業が公表義務の対象企業となります。
なお、本改正は、経過措置として「施行日以後に開始する事業年度」から適用されます。
労使協定による継続雇用期間6ヵ月未満除外規定が廃止されます。
改正前:<除外できる労働者>
(ア)週の所定労働日数が2日以下、(イ)継続雇用期間6ヵ月未満
改正後:<除外できる労働者>
(ア)週の所定労働日数が2日以下のみ
各種規程等や労使協定で(イ)の労働者を対象外としていた場合は、当該規定の削除をした上で、労使協定の再締結が必要です。
介護休業や介護両立支援制度等の申出が円滑に行われるようにするため、会社は下記のいずれかの措置を講じなければなりません。
(1)介護休業・介護両立支援制度等に関する研修の実施
(2)介護休業・介護両立支援制度等に関する相談体制の整備
(3)介護休業取得・介護両立支援制度等の利用の事例の収集・提供
(4)介護休業制度及び介護両立支援制度等並びに介護休業取得・介護両立支援制度等の利用促進に関する方針の周知
なお、介護両立支援制度等とは、(ア)介護休暇、(イ)所定外労働の制限、(ウ)時間外労働の制限、(エ)深夜業の制限、(オ)所定労働時間の短縮等のことをいいます。
令和7年4月1日以降は、少なくとも1つ以上の措置を実施する必要があります。
介護に直面した旨の申出をした労働者に対して、会社は介護休業制度等に関する下記の事項の周知と介護休業の取得・介護両立支援制度等の意向確認を、個別に行わなければなりません。
(1)周知事項
(ア)介護休業に関する制度・介護両立支援制度等(制度の内容)
(イ)介護休業・介護両立支援制度等の申出先(例:総務部など)
(ウ)介護休業給付に関すること
(2)個別周知・意向確認の方法
以下のいずれかの方法で個別周知・意向確認をしなければなりません。
(ア)面談
(イ)書面交付
(ウ)FAX
(エ)電子メール等
なお、(ウ)(エ)については、労働者が希望した場合のみとされています。
令和7年4月1日以降、労働者が対象家族を介護する必要が生じた旨の申出があった場合は、上記(1)の事項を労働者に個別に知らせるとともに、介護休業や介護両立支援制度等の利用についての意向確認を、上記(2)のいずれかの方法により行う必要があります。
また、対象となる労働者に対して介護両立支援制度等を漏れなく伝えるために、(2)のいずれの方法による場合であっても、周知用の文書を作成することが望ましいと思われます。
⑦の個別周知・意向確認とは別に、労働者が40歳に達した日の属する年度その他省令で定める期間の始期に達したときは、その労働者に対して、介護休業や介護両立支援制度等の理解と関心を深めるため、会社は介護休業制度等に関する以下の事項について情報提供しなければなりません。
(1)情報提供期間
(ア)40歳に達する日(誕生日前日)の属する年度(1年間)
(イ)40歳に達した日の翌日(誕生日)から1年間
のいずれか
例えば、40歳の誕生日が令和7年10月1日としたとき、(ア)の場合は令和7年4月1日から令和8年3月31日までに、(イ)の場合は令和7年10月1日から令和8年9月30日までの間に行うことになります。
(2)情報提供事項
情報提供を行う事項は、⑦(1)の対象家族が介護を必要とする状況に至った旨の申出があった場合の個別周知の内容と同じです。
(ア)介護休業に関する制度・介護両立支援制度等(制度の内容)
(イ)介護休業・介護両立支援制度等の申出先(例:総務部など)
(ウ)介護休業給付に関すること
(3)情報提供の方法
以下のいずれかの方法で情報提供しなければなりません。
(ア)面談
(イ)書面交付
(ウ)FAX
(エ)電子メール等
なお、⑦(2)とは異なり、上記(ウ)(エ)の方法について労働者の希望を条件としていないため、対象者に対し、一律に(ウ)(エ)の方法により情報提供を行うことが可能です。
早期の情報提供は、労働者から申出があった場合に行うものではなく、40歳のタイミングを迎える労働者に一律に行う必要があります。
このため、対応にあたっては、まず、(1)の(ア)(イ)のいずれかのタイミングで行うかを決めた上で、毎年同じ時期に、対象者に情報提供を行うという運用が考えられます。
情報提供の場合、個別周知・意向確認とは異なり、労働者の希望の有無にかかわらずFAXや電子メール等による方法が認められていますので、情報提供の文書を作成しておき、電子メール等で対象者に一斉に送信することも考えられます。