社労士コラム
IPO労務監査のチェックリスト(2024年4月労働基準法施行規則等の改正)
2024.02.8IPO労務監査
IPO労務監査において、重要なチェック項目の1つとして、2024年4月の「労働基準法施行規則」、「労働時間等の設定の改善に関する特別措置法施行規則」、「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」の改正があります。
この改正により、2024年4月以降、労働条件通知書の内容等の変更が必要となります。
そこで、今回は、2024年4月改正の「労働基準法施行規則」、「労働時間等の設定の改善に関する特別措置法施行規則」、「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」について、解説したいと思います。
まず、令和4年4月1日改正の「労働基準法施行規則」、「労働時間等の設定の改善に関する特別措置法施行規則」、「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」の改正ポイントは、下記の4つです。
①就業の場所と従事すべき業務について「変更の範囲」を明示する義務
②「更新上限の有無とその内容」を明示する義務等
③無期転換を申し込むことができる旨を明示する義務
④無期転換後の労働条件を書面にて明示する義務
なお、①~③については、労働契約書又は労働条件通知書等の変更が必要となります。
このため、IPO労務監査においても、①~③について、労働契約書又は労働条件通知書等の変更がされているかどうか、④については、無期転換発生時に無期転換後の労働条件が書面で明示されているかどうかがチェックされます。
目次
全従業員に対して、労働契約書又は労働条件通知書において、就業の場所と従事すべき業務について「変更の範囲」を明示しなければなりません。
全ての従業員が対象となります。なお、「変更の範囲」の明示が必要となるのは、2024年4月1日以降に契約締結・契約を更新する従業員となります。
就業の場所と従事すべき業務の「変更の範囲」について、労働契約締結時と、有期労働契約の更新時に、書面による明示が必要となります。
「就業の場所と従事すべき業務」とは、労働者が通常就業することが想定されている就業の場所と、労働者が通常従事することが想定されている業務のことを指すとされています。
なお、配置転換や在籍出向が命じられた際の配置転換先や在籍出向先の場所や業務は含まれますが、臨時的な他部門への応援業務や出張、研修等、就業の場所や従事すべき業務が一時的に変更される際の、一時的な変更先の場所や業務は含まれないとされています。
また、「変更の範囲」とは、今後の見込みも含め、その労働契約の期間中における就業場所や従事する業務の変更の範囲のことをいうとされています。
このため、IPO労務監査においても、全従業員に対して、「変更の範囲」が書面で明示されているかどうかチェックされます。
有期契約社員に対して、労働契約書又は労働条件通知書において、「更新上限の有無とその内容」を明示しなければなりません。また、更新上限を新設・短縮する場合は、その理由を説明しなければなりません。
有期契約社員(契約社員、パート・アルバイト等)が対象となります。
有期労働契約の締結と更新のタイミングごとに、更新上限(通算契約期間または更新回数の上限)がある場合には、書面でその内容の明示が必要となります。
例えば、「契約期間は通算5年を上限とする」や「更新回数は4回までとする」などの明示が必要となります。
また、「更新上限を新たに設けようとする場合」または「更新上限を短縮しようとする場合」は、あらかじめ更新上限を設定する・短縮する理由を有期契約社員に説明することが必要となります。
「更新の上限の短縮」とは、例えば、通算契約期間の上限を5年から3年に短縮する、または更新回数の上限を4回から2回に短縮する等のことです。
このため、IPO労務監査においても、有期契約社員に対して、書面で「更新上限」が明示されているかどうかチェックされます。
雇用期間が5年を超えて無期転換申込権が発生する有期契約社員に対して、労働契約書又は労働条件通知書において、無期転換を申し込むことができる旨を明示しなければなりません。
無期転換申込権が発生する有期契約社員が対象となります。
「無期転換申込権」が発生する契約更新のタイミングごとに、該当する有期労働契約の契約期間の初日から満了する日までの間、「無期転換を申し込むことができる旨」を書面で明示することが必要となります。
なお、初めて無期転換申込権が発生する有期労働契約が満了した後も、有期労働契約を更新する場合は、更新の都度、上記明示が必要となります。
このため、IPO労務監査においても、無期転換申込権が発生する有期契約社員に対して、「無期転換を申し込むことができる旨」を書面で明示しているかどうかチェックされます。
無期転換申込権が発生する際に、無期転換後の労働条件を明示しなければなりません。
無期転換申込権が発生する有期契約社員が対象となります。
「無期転換申込権」が発生する契約更新のタイミングごとに、無期転換後の労働条件を書面により明示することが必要となります。明示する労働条件は、労働契約締結の際の明示事項と同じものです。
このため、IPO労務監査においても、無期転換申込権が発生する有期契約社員に対して、「無期転換後の労働条件」が書面により明示されているかどうかチェックされます。
「令和5年度改正労働基準法施行規則等に係る労働条件明示等に関するQ&A」によると、既に雇用されている社員に対して、改めて労働条件を明示する必要はないとのことです。
新たな明示ルールは、令和6年4月1日以降に締結される労働契約について適用されるとのことです。
また、有期契約社員については、契約の更新は新たな労働契約の締結であるため、令和6年4月1日以降の契約更新の際には、新たなルールに則った明示が必要になるとのことです。
「令和5年度改正労働基準法施行規則等に係る労働条件明示等に関するQ&A」によると、労働基準法15条の労働条件の明示は、労働契約の締結に際し行うものであることから、契約の始期が令和6年4月1日以降であっても、令和6年3月以前に契約の締結を行う場合には、改正前のルールが適用され、新たな明示ルールに基づく明示は不要であるとのことです。