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社労士コラム

IPO労務監査と社会保険労務士

2023.08.1IPO労務監査

①社会保険労務士とは

社会保険労務士とは、労働関連の法律の専門家として人事や労務管理のアドバイスを行う専門家のことを指します。

社会保険労務士は、誰でも就ける職業ではなく、国家資格である社会保険労務士資格を取得している人のみが就ける職業です。

なお、労働保険や社会保険、労働問題、公的年金の分野では、唯一の国家資格です。

会社において、従業員の採用から退職までの労務に関する諸問題に応じる人事労務の専門家で、社会保険労務士の業務内容は広範囲にわたります。

②社会保険労務士の仕事とは?

社会保険労務士の仕事は、大きく分けて3つの業務(1号業務、2号業務、3号業務)があります。

まず、1号業務とは、社会保険労務士しか業務を行えない「独占業務」で、手続き代行業務のことを指します。

労働保険や社会保険などに関連する書類を作成し、労働基準監督署やハローワークなどの行政官庁へ提出を代行する業務です。

次に、2号業務である労働社会保険諸法令に基づく帳簿書類の作成も、社会保険労務士の「独占業務」となっています。

例えば、就業規則や労働者名簿、賃金台帳などが「労働社会保険諸法令に基づいて作成すべき帳簿書類」にあたり、社会保険労務士はこれらの法律にのっとって作成します。

法律の知識なしに就業規則等を作成すると、場合によっては法律の範囲を超えてしまう危険性があります。

このため、就業規則等の帳簿書類の作成は、会社の重要な書類のため、労働法の専門家である社会保険労務士が請け負うことが多いです。

最後に、3号業務とは、社会保険労務士の独占業務ではありませんが、人事労務管理のコンサルティング業務のことを指します。

近年では働き方が多様化し、正社員以外にも非正規社員や派遣社員、外国人などさまざまな雇用形態で働く人が増えています。

これに伴い、人事労務の問題も複雑化し、会社内では解決が難しいケースもあります。

また、IPOやM&Aなどのケースにおいても、以前は労働法に関連する問題はあまり重要視されてきませんでしたが、近年はコンプライアンス等の意識の高まりから労働法に関連する問題についても、厳しくチェックされる時代に変わっています。

その際に社会保険労務士が、専門家の立場からコンサルティングを行います。

なお、IPO労務監査は、3号業務に該当します。

このようにIPO労務監査は、社会保険労務士の独占業務ではないため、社会保険労務士以外の者もIPO労務監査行うことができますが、労働関連の法律の知識がないと、IPO労務監査を行うことは事実上不可能であるため、社会保険労務士が請け負うケースが多いと思われます。

③IPOに必要な監査とは?

IPOとは新規上場や株式上場を意味し、不特定多数の人が自社の株式を証券取引所(東京証券取引所など)で、自由に売買できるようにすることです。

このために、IPOするには、投資家保護の観点から、主幹事証券会社と証券取引所が厳しい審査を要求してきます。

特に財務については、粉飾決算等により投資家が損を被らないようにするため、証券取引所の審査前に、上場申請の直前2決算期間については、独立した第三者の立場にある監査法人の会計監査(法定監査)を受けて監査証明を得る必要があります。

④IPO労務監査は必ず受けないといけない?

一方で、IPO労務監査については、実施が義務付けられているものではありません。

しかしながら、監査法人や主幹事証券会社が、IPOを目指す企業に対し、社会保険労務士によるIPO労務監査を受けるよう進言することで実施されるケースがほとんどです。

監査法人や主幹事証券会社が、社会保険労務士によるIPO労務監査を受けるよう進言する理由は、労務に関する領域については、財務諸表からは明らかにならない簿外債務(未払い賃金等)が隠れている可能性があり、その内容によっては、財務諸表の数字が大きく、変動し、IPO直前で簿外債務が判明した場合、IPOができない、あるいはIPOが延期されてしまう可能性があるからです。

⑤IPO労務監査とは?

IPO労務監査業務については、社会保険労務士法には業として規定されていません。

このため、IPO労務監査は、監査法人による法定監査とは異なり、任意監査であるため、監査の範囲や監査項目等が統一されておらず、最終的には依頼者と社会保険労務士との契約に委ねられているのが実態です。

当事務所が考えるIPO労務監査の目的は、IPO準備会社が上場審査に通過するために、上場審査において障害となりうる労務上の問題点(課題)を確認することであると考えています。

⑥IPO労務監査とM&A労務デューデリジェンスとの違いとは?

IPO労務監査は、上場審査で確認される可能性が高い人事労務に係る事項を中心とした、主に法令遵守(コンプライアンス)という点に重点が置かれているのに対し、M&A労務デューデリジェンスにおいては、買収価格に直接影響のある「潜在債務」の有無とその程度の調査に重点が置かれているという点が相違しています。

つまり、M&A労務デューデリジェンスの場合は、問題があるといった場合、それが金額的にどの程度影響があるのかという視点が重要ということになるため、IPO労務監査とM&A労務デューデリジェンスとの間には共通するところも多いのですが、重点ポイントが異なります。

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