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社労士コラム

IPO労務監査のチェックリスト(セクハラ)

2021.12.7IPO労務監査

IPO労務監査において、重要なチェック項目の1つとして、「セクハラ」があります。

「セクハラ」について、正確にその内容を把握できていないと、思わぬところで「法的なリスク」を抱えている可能性がありますので、IPO労務監査において、その内容を的確に把握する必要があります。

①セクハラ防止対策とは?

男女雇用機会均等法では、事業主に対し「セクハラの防止対策」が義務づけられています。

なお、詳細は「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針」に記載されています。

指針の内容は、大きく分けると

①セクハラの定義

②雇用管理上講ずべき措置(セクハラ防止対策)

③望ましい取組

に分かれています。

IPO労務監査においては、①②が重要な部分となりますので、この部分を解説していきたいと思います。

②セクハラの定義とは?

セクハラとは、「職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け(対価型セクハラ)、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されること(環境型セクハラ)」をいいます。

(1)対価型セクハラとは

「対価型セクハラ」とは、職場において行われる労働者の意に反する性的な言動に対する労働者の対応により、当該労働者が解雇、降格、減給等の不利益を受けることであって、典型的な例として、次のようなものがあります。

1.事業所内において事業主が労働者に対して性的な関係を要求したが、拒否されたため、当該労働者を解雇すること

2.出張中の車内において上司が労働者の腰、胸等に触ったが、抵抗されたため、当該労働者について不利益な配置転換をすること

3.営業所内において事業主が日頃から労働者に係る性的な事柄について公然と発言していたが、抗議されたため、当該労働者を降格すること

(2)環境型セクハラとは

「環境型セクハラ」とは、職場において行われる労働者の意に反する性的な言動により、労働者の就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じる等当該労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じることであって、典型的な例として、次のようなものがあります。

1.事業所内において、上司が労働者の腰、胸等に度々触ったため、当該労働者が苦痛を感じて、その就業意欲が低下していること

2.同僚が取引先において労働者に係る性的な内容の情報を意図的かつ継続的に流布したため、当該労働者が苦痛を感じて、仕事が手につかないこと

3.労働者が抗議をしているにもかかわらず、事務所内にヌードポスターを掲示しているため、当該労働者が苦痛に感じて業務に専念できないこと

③雇用管理上講ずべき措置(セクハラ防止対策)とは?

事業主が「雇用管理上講ずべき措置(セクハラ防止対策)」とは

(1)事業主の方針等の明確化、その周知・啓発

(2)相談体制の整備

(3)事後の適切・迅速な対応

(4)上記(1)~(3)と併せて講ずべき措置

この(1)~(4)は、会社が講じなければならない措置(義務)であるため、実務上はこれに対応する必要があります。

対応方法は、下記の<認められる例>をご参照ください。

なお、IPO労務監査においても、IPO準備会社で「雇用管理上講ずべき措置(セクハラ防止対策)」が講じられているかどうかチェックされます。

(1)事業主の方針等の明確化、その周知・啓発とは

1.職場におけるセクハラの内容及びセクハラを行ってはならない旨の方針を明確化し、管理監督者を含む労働者に周知・啓発すること

<認められる例>

・就業規則等において、セクハラを行ってはならない旨の方針を規定し、当該規定と併せて、セクハラの内容及び性別役割分担意識に基づく言動がセクハラの発生の原因や背景となり得ることを、労働者に周知・啓発すること

・社内報等広報又は啓発のための資料等にセクハラの内容及び性別役割分担意識に基づく言動がセクハラの発生の原因や背景となり得ること並びにセクハラを行ってはならない旨の方針を記載し、配布等すること

・セクハラの内容及び性別役割分担意識に基づく言動がセクハラの発生の原因や背景となり得ること並びにセクハラを行ってはならない旨の方針を労働者に対して周知・啓発するための研修、講習等を実施すること

2.職場におけるセクハラに係る性的な言動を行った者については、厳正に対処する旨の方針及び対処の内容を就業規則等に規定し、管理監督者を含む労働者に周知・啓発すること

<認められる例>

・就業規則等において、セクハラに係る性的な言動を行った者に対する懲戒規定を定め、その内容を労働者に周知・啓発すること

・職場におけるセクハラに係る性的な言動を行った者は、現行の就業規則等において定められている懲戒規定の適用の対象となる旨を明確化し、これを労働者に周知・啓発すること

(2)相談体制の整備とは

1.相談への対応窓口を設置し、労働者に周知すること

<認められる例>

・相談に対応する担当者をあらかじめ定めること

・相談に対応するための制度を設けること

・外部の機関に相談への対応を委託すること

2.相談窓口の担当者が、相談に対し、その内容や状況に応じ適切に対応できるようにすること

<認められる例>

・相談窓口担当者と人事部門とが連携を図ることができる仕組みとすること

・相談窓口担当者が相談を受けた場合、留意点などを記載したマニュアルに基づき対応すること

・相談窓口担当者に対し、相談を受けた場合の対応についての研修を行うこと

(3)事後の適切・迅速な対応とは

1.事案に係る事実関係を迅速かつ正確に確認すること

<認められる例>

・相談窓口担当者、人事部門等が、相談者及び行為者の双方から事実関係を確認すること

・事実関係を迅速かつ正確に確認しようとしたが、確認が困難な場合などにおいて、調停の申請を行うことその他中立な第三者機関に紛争処理を委ねること

2.セクハラの事実確認ができた場合は、速やかに被害者に対する配慮のための措置を適正に行うこと

<認められる例>

・被害者と加害者の間の関係改善に向けての援助、被害者と行為者を引き離すための配置転換、行為者の謝罪、被害者の労働条件上の不利益の回復、管理監督者又は事業場内産業保健スタッフ等による被害者のメンタルヘルス不調への相談対応等の措置を講ずること

・調停その他中立な第三者機関の紛争解決案に従った措置を被害者に対し講ずること

3.行為者に対する措置を適正に行うこと

<認められる例>

・就業規則等に定める規定等に基づき、行為者に対して必要な懲戒その他の措置を講ずること。被害者と行為者の間に関係改善に向けての援助、被害者と行為者を引き離すための配置転換、行為者の謝罪等の措置を講ずること

・調停その他中立な第三者機関の紛争解決案に従った措置を行為者に対し講ずること

4.改めて職場におけるパワーハラスメントに関する方針を周知・啓発する等の再発防止に向けた措置を講ずること

<認められる例>

・セクハラを行ってはならない旨の方針及びセクハラに係る性的な言動を行った者について厳正に対処する旨の方針を、社内報等広報又は啓発のための資料等に改めて掲載し、配布等すること

・労働者に対しセクハラに関する意識を啓発するための研修、講習等を改めて実施すること

(4)上記(1)~(3)と併せて講ずべき措置とは

1.相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講ずるともに、その旨を労働者に対して周知すること

<認められる例>

・プライバシー保護のためのマニュアルを定め、相談窓口担当者が相談を受けた際は、マニュアルに基づき対応すること

・プライバシー保護のために、相談窓口担当者に必要な研修を行うこと

・プライバシー保護するために必要な措置を講じていることを、社内報等広報又は啓発のための資料等に掲載し、配布等すること

2.セクハラに関し相談等したことを理由として、解雇その他不利益な取扱いをされない旨を定め、労働者に周知・啓発すること

<認められる例>

・就業規則等において、セクハラの相談等を理由として、労働者が解雇等不利益な取扱いをされない旨を規定し、労働者に周知・啓発すること ・社内報等広報又は啓発のための資料等に、セクハラの相談等を理由として、労働者が解雇等の不利益な取扱いをされない旨を記載し、労働者に配布等すること

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