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社労士コラム

IPO労務監査のチェックポイント(年次有給休暇)

2021.11.19IPO労務監査

IPO労務監査において、重要なチェック項目の1つとして、「年次有給休暇」があります。

「年次有給休暇」について、正確にその内容を把握できていないと、思わぬところで「法的なリスク」を抱えている可能性がありますので、IPO労務監査において、その内容を的確に把握する必要があります。

①年次有給休暇とは?

労働基準法39条によると、「使用者は、その雇入れ日から起算して6ヵ月間継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した10労働日の有給休暇を与えなければならない」としています。

このため、年次有給休暇は「6ヵ月間の継続勤務」と「全労働日の8割以上出勤」の2つの要件を満たすことによって、その権利が発生します。

以降は、「1年間の継続勤務」と「全労働日の8割以上出勤」により基準日ごとにその権利が発生します。

②年次有給休暇の付与日数は?

具体的な付与日数は、下記のとおりです。

・継続勤務6ヵ月     10日

・継続勤務1年6ヵ月   11日

・継続勤務2年6ヵ月   12日

・継続勤務3年6ヵ月   14日

・継続勤務4年6ヵ月   16日

・継続勤務5年6ヵ月   18日

・継続勤務6年6ヵ月以上 20日

IPO労務監査においても、IPO準備会社で上記基準以上の付与日数が付与されているかどうかチェックされます。

なお、週の所定労働時間数が30時間未満の者であって、かつ、次の(1)又は(2)のいずれかに該当する者は、比例付与といって、上記付与日数より少ない日数が付与されますので、ご注意ください。

(1)週の所定労働日数が4日以下の者

(2)週以外の期間で所定労働日数が定められている場合には、年間所定労働日数が216日以下の者

③年次有給休暇の消滅時効は?

年次有給休暇をその年度内に全部取得しなかった場合、残りの休暇日数は、次年度に繰り越すことができます。

年次有給休暇の請求権は、労働基準法115条の規定により2年の消滅時効が認められているからです。

④年次有給休暇の賃金は?

年次有給休暇の賃金については、就業規則その他これに準ずるもので定めることにより、

(1)平均賃金

(2)所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金

(3)健康保険法40条1項に規定する標準報酬日額相当額

のいずれかの額を支払わなければなりません。

なお、(3)を選択する場合は、労使協定を締結する必要があります。

(2)「所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金」とは、次の方法によって算定した金額です。

・時間給の場合 時間給×所定労働時間数

・日給の場合  日給額

・週給の場合  週給額÷その週の所定労働日数

・月給の場合  月給額÷その月の所定労働日数

・月、週以外の一定の期間で賃金が決められている場合 上記4つの計算方法に準じて算定

・出来高払制その他の請負制の場合 (賃金算定期間の賃金総額÷当該期間における総労働時間数)×当該期間における1日の平均所定労働時間数

・上記の2つ以上の計算方法を併用する場合、それぞれ算定した金額の合計額

なお、行政解釈では、日給者、月給者等につき、所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金を支払う場合には、通常の出勤をしたものとして取り扱えば足り、上記に定める計算をその都度行う必要はないとされています。

IPO労務監査においても、IPO準備会社で有給取得日に上記通常の賃金が支払われているかどうかチェックされます。

⑤年次有給休暇の「斉一的取扱い」と「分割付与」とは?

なお、上記有給の付与方式は、労働者の雇入れ日ごとに年休の付与を管理する個別管理方式であり、これが労働基準法の原則的な考え方です。

ただし、この方式の場合、労働者によってその雇入れ日が異なるため、年休の管理が煩雑になります。

このため、通達(平6.1.4基発1号)により、年次有給休暇付与の「斉一的取扱い」や「分割付与」が、一定の要件のもとで認められています。

(1)斉一的取扱いとは?

「斉一的取扱い」とは、原則として、全労働者につき一律の基準日を定めて有給を与える取扱いをいいます。

例えば、4月1日入社した者に入社時に10日、1年後である翌年の4月1日に11日付与とする場合です。

(2)分割付与とは?

「分割付与」とは、初年度において法定の有給の付与日数を一括して与えるのではなく、その日数の一部を法定の基準日以前に付与することをいいます。

例えば、4月1日入社した者に入社時に5日、法定の基準日である6箇月後の10月1日に5日付与し、次年度の基準日は本来翌年10月1日であるが、初年度に10日のうち5日分について6箇月繰り上げたことから同様に6箇月繰り上げ、4月1日に11日付与する場合です。

(3)「斉一的取扱い」と「分割付与」を導入する要件とは?

なお、「斉一的取扱い」や「分割付与」を導入するには、下記の要件を満たす必要があります。

(a)「斉一的取扱い」や「分割付与」により法定の基準日以前に付与する場合の年次有給休暇の付与要件である8割出勤の算定は、短縮された期間は全期間出勤したものとみなすものであること。

(b)次年度以降の年次有給休暇の付与日についても、初年度の付与日を法定の基準日から繰り上げた期間と同じ又はそれ以上の期間、法定の基準日より繰り上げること。

このように、使用者は、煩雑さを回避するため斉一的取扱い等をすることが認められますが、これらを採用する場合、労働基準法上付与される日数を下回らないようにする必要があります。

この点も、IPO労務監査において、チェックされます。

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